【開業医のためのお金の教室④】青色事業専従者について

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こんにちは、shiro-mameshibaです。

 

今回は、家族を従業員とする場合の青色事業専従者についての解説です。

 

 

青色事業専従者

 

まず、今回の要点です。

 

  • 通常、個人事業で家族に(仕事をせずに)報酬をあげて経費にすること(役員扱い)はできません。
  • ただし、青色申告をして、家族が個人事業を専業して実際に労働する場合には経費にできます。
  • 青色事業専従者給与は、青色申告者が、個人事業に携わっている家族(青色事業専従者)に対する報酬を控除できるものです。

 

一つずつ解説します。

 

個人事業で家族に報酬をあげることは基本的に出来ない

 

まず、基本的には、個人事業(クリニック)で、家族内で(仕事をせずに)報酬を上げても、経費には出来ません。

 

 

なぜなら、それは、家族内のお金のやり取りにすぎないからです。

 

 

もし仮に、家族内のお金のやり取りを経費にできてしまうとしたら、それはつまり、家族にお小遣いをあげると、それが経費に出来てしまうのと同じだからです。

 

 

つまり、他で仕事がある妻などに、お小遣いをあげただけで、その分、税金を安く済ませることは出来ないことは、一般常識から考えても当たり前のこと思われます。

 

 

青色事業専従者

 

ただし、青色申告をして、家族が個人事業を専業(労働の半分以上)して実際に労働する場合には経費にできます。

 

 

これを、青色事業専従者といいます。

 

 

青色事業専従者になれる条件は、以下のとおりです。

 

  1.  青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
  2.  その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
  3.  その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

 

つまり、家業に専念して、きちんと働いている(名ばかりではない)時には、 給与を支払うことが認められています。

 

 

また、この認可には、事前に、青色事業専従者に関する届出書を、納税地の所轄税務署長に提出していることが必要です。

 


提出期限は、青色事業専従者給与額を算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始した場合や新たに専従者がいることとなった場合には、その開始した日や専従者がいることとなった日から2か月以内)です。

 

青色事業専従者の給与額

 

さて、家族を青色事業専従者にできたとして、その給与額はいくらにすれば良いでしょうか?

 

 

まず、事業所得全体から経費を引き、残った分が、開業医(個人事業主)の所得となり、累進課税されてしまいます。

 

通常であれば、この所得税は下表の少なくても33%(課税所得900万円以上)、開業医の多くは40%~となるはずです。

 

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この所得税をできるだけ下げるためには、単純な計算では、2で割り、開業医の額面年収の半額を、青色事業専従者の給与とすればよいはずです。

 

 

しかし、青色事業専従者の給与は、実態と合わない、過大な額にしてはならない、という決まりがあります。

 

 

過大な青色事業専従者給与は否認される

 

 

何よりおそろしいのは、この青色事業専従者の給与が過大であると否認されてしまった場合、そのとしの青色事業専従者の給与が経費として認められないばかりか、青色事業専従者の給与にも課税されますので、税の二重課税が行われてしまうのです。

 

 

つまり、本来、経費として認められるはずだった青色事業専従者の給与分の金額も、開業医の事業所得の利益として、そのまま所得税・市民税が課税されてしまう上に、青色事業専従者に給与として支払われた(事業所得課税前の金額)にも、再び所得税、市民税がそのまま課税されてしまいますので、青色事業専従者が働いた分が、全くの損になってしまうのです。

 

 

大変おそろしい課税額となりますが、通常、税理士と相談して、適切な金額を支給するのならば、そこまで怖がる必要はありません。

 

 

 

青色事業専従者の適正な給与

 

適切な給与とは、つまりは、そのクリニック内で働いている、他の従業員を参考にすればよいのです。

 

 

青色事業専従者が看護師であったならば350万円~、事務員であったならば250万円~として計算します。

 

 

ただし、通常であれば、他の従業員と全く同じ額にする必要はなく、少しは高い金額でも大丈夫です。

 

 

また、青色事業専従者が、看護師だけではなく、事務員の仕事もする、また、クリニックの事務長も兼ねているという実績があれば、その分も加算して加味することが出来ますので、通常、600万円~の給与としても、まず問題になることはないでしょう。

 

 

こうすることで、事業主の所得を分散することが出来ますので、累進課税を下げることが出来ます。

 

給与所得控除

 

青色事業専従者に支払う給与にも、一般労働者と同様に、給与所得控除(下表)が控除することが出来ます。

 

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給与が350万円だった場合、350万円✕30%+80,000万円=113万円がまず控除されます。

 

 

残りの237万円から、基礎控除48万円がさらに控除されますので、237-48万円=189万円となります。

 

 

この189万円から、国民年金(年額19.8万円)、社会保険、(加入者は)iDeCoや小規模企業共済が、さらに控除された金額に、所得税、市民税が加算されることになります。

 

 

 

 

なお、個人事業主である開業医の事業所得には、給与所得控除はありません。

 

 

 

法人成りして、医療法人となり、開業医も給与所得を支払う際には、給与所得控除が認められます。

 

 

また、法人成りして、配偶者が役員(理事)となれば、青色事業専従者の給与を超えて、1,000万円~といった報酬にすることも可能ですので、より、節税効果が期待できます。

 

 

職員が足りているのならば、他で働いたほうが良い

 

ただし、青色事業専従者は、課税所得の分配ということで、高い所得税率の個人事業主の課税所得を下げる節税効果はありますが、それ自体が利益を生むものではありません。

 

 

もし仮に、青色事業専従者がいなくても、クリニックの運営に全く問題ないくらいに職員が足りているのならば、たかだか数十万円~程度の節税効果しかないこの方法は、青色事業専従者が一生懸命働いた労力の割に合いません。

 

 

素直に、配偶者は、他で働いたほうが良いでしょう。

 

 

 

この青色事業専従者は、あくまで、クリニックの運営に必要な人材として雇うことで、本来は、従業員の給料になるはずだった金額を配偶者の給与として得た上で、個人事業主所得税節税効果を発揮することで、はじめて意味がある方法です。

 

 

繰り返しになりますが、クリニックの余剰要員であるならば、配偶者には、外で働いてしっかり稼いでもらいましょう。

 

配偶者控除、扶養控除除外は気にしなくて良い

 

また、青色事業専従者の注意点としてしばしば指摘される点ですが、青色事業専従者になると、個人事業主の所得から、配偶者控除、扶養控除が出来なるくなる、というものがあります。

 

 

しかし、これも、開業医であれば、全く考える必要はありません。

 

 

なぜなら、2018年から、所得が1,000万円(年収1,220万円)を超える場合は、もともと配偶者控除は全く消失してしまったからです。

 

 

勤務医である、現在の私でさえ、もはや配偶者控除の恩恵は、全く受けていません。

 

 

個人事業主として開業した場合も、当然、青色事業専従者にかかる、この配偶者控除適用除外は、全く問題にならないでしょう。

 

 

むすびに

 

青色事業専従者は、課税所得を分散して、節税効果もありますが、それ以上に、信頼できるパートナーが同じクリニック内で働いてくれることで、家族間のつながりをより強く出来るという結果にもなります。

 

 

また、クリニック内の人間関係が、クリニック経営で最も大きな悩みごとと、しばしば言われます。

 

 

突然止めてしまう看護師、私語ばかりの事務員、お局とかしたベテラン看護師が新入看護師をイジメてしまう、といった話をよく聞きます。

 

 

 

そこに一人、自分のパートナーが入ることで、そのような悪影響のある職員の行動がエスカレートしないように、歯止めをかけることが出来るでしょう。

 

 

 

クリニック経営は、自分ひとりの問題ではなく、家族全体の人生がかかっています。

 

 

配偶者と二人で、二人三脚、地域に愛されるクリニックを作れるまで、一緒に協力していけたのなら、開業自体が、夫婦共通の夢や目標になって、人生の最大の喜びとすることができるでしょう。

 

 

それでは皆さま、よい開業を!

 

 

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