米中貿易戦争で、中国が一概に不利とは言えない、その理由。

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こんにちは、shiro-mameshibaです。

 

前回、週明けは赤の惨劇になるかも、と書きましたが、結果はダウ平均前日比 -617.3$(-2.38%)と、私の予想以上に、凄惨な下げ幅を示しました。

 

さて、この(世界中に迷惑をかけている)米中貿易戦争は、いったいいつまで続くのでしょうか。

 

一般的に、米中貿易戦争は、貿易額の差から米国有利であり、中国は早期妥結を望んでいる、とされていますが、必ずしもそうとは言えないようです。

 

この点に関して、ロイターから興味深い記事がありましたので、紹介します。

 

 

貿易戦争は、中国が一概に不利とは言えない

jp.reuters.com

 

<米国への打撃、想定上回る恐れ>

さて、先述したIMF試算で米国経済への影響が中国よりも相対的にかなり小さいのは、なぜだろうか。GDP規模の違いという単純な理由以外に、下記の点が考えられるが、この先もそれが続く保証はない。

第1は、中国の対米輸出額が5000億ドル以上に達するのに対して、米国の対中輸出額は1300億ドルにとどまることだ。中国側が貿易面だけで同規模、同程度の報復措置を行うことは、すでに困難な状況になっている。残りの3250億ドルに関税が賦課された場合、中国が貿易面で取ることのできる手段は限られる。

ただし、筆者の認識では、仮に米中間の交渉が決裂となれば、中国は対抗措置として貿易外の措置を駆使してくることは間違いない。その最たるものが中国に進出している米国企業の製品不買運動だ。

(中略)米国の中国現地法人の売上高は年間4800億ドル超もあり、半減となれば、その影響は甚大なものになる。

(中略)。

以上のようにみると、米中交渉が決裂し、中国が本気で反撃に出た場合、米国経済への影響はマイナス1.0ポイントと相当の痛みを被ることになろう。世界の2大経済大国がこれだけの打撃を被ることになれば、世界経済は後退に向かい、日本経済への影響も深刻となることは必定だ。

 

長いので、まとめますと

  

 

中国の対米輸出額が5000億ドル以上、米国の対中輸出額は1300億ドルにとどまる。
 
②そのため、一般的に米国有利と言われているが、一概にそうは言えない。
 
③なぜなら、米国の中国現地法人の売上高は年間4800億ドル超もあり、中国が米国企業の製品不買運動を画策した場合、米国企業の影響は甚大なものになるからだ。
 
④これまでの関税は、関税によるコストの相当部分は中国企業が負担しており、米国の消費者には十分転嫁されていなかった
 
⑤これ以上の関税を中国企業がコスト負担をカバーするのは限界であり、第3段以降の関税は、米国の消費者にも目に見える形で負担が出現してくる

 

 

とのことです。

 

中国の不買運動は、米国企業にとって脅威

 

記事にもある通り、 かつて日本も、尖閣問題の時に中国の(政府が裏で画策した、と言ってしまって良いでしょう)不買運動が起こりました。

 

当時、毎朝ニュースで流される、街を覆い尽くさんばかりの暴徒日本製品破壊・略奪する様は、日本企業にとってまさに悪夢そのものでした。

 

最近では、韓国も新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)配備の際に、中国で不買運動が起きました。

 

これにより、同期間の両国の中国の売上は半減するという大惨事に見舞われました。

 

そして、この不買運動は、中国現地法人の売上高が年間4800億ドル超もある米国企業にとっても、脅威に他なりません

 

もちろん、米国製品と言っても、中身はほとんどが中国製であり、不買運動が長引くことは、中国のサプライヤーにとっても損害を受ける、いわば諸刃の剣です。

 

貿易・外交戦略としては、かなりダーティーな方法(少なくても、日本や先進国では、政府が影で主導するようなことは、おそらく出来ないでしょう)ですが、必要となれば、中国政府はためらわないでしょう。

 

あとは、不買運動タイミングです。

 

トランプ大統領が、追加関税を急ぐ理由

 

もし、中国政府が不買運動を起こすとしたら、その目的は、米国企業の経済的損害、ひいては米国株価のさらなる下落と経済悪化、米国民の負担増加により、最終的には、トランプ大統領に支持率低下大統領選の敗北を狙ったものになるでしょう。

 

次回の米国大統領選挙は、2020年11月3日です。

 

しかし、もし今の時点で不買運動を引き起こしたとたら、大統領選までは、まだ1年半も期間があります。

 

もし仮に、中国政府の狙い通り、株価低下、トランプ大統領の支持率低下が起こせたとしても、そこから1年半もあれば、なんらかの不確定要素で、株価回復とそれによる支持率上昇が起こる可能性が高く、むしろ、長期の不買運動による中国自身の経済的損失と、米国民の怒りが中国に向けられることで、中国強硬論が米国内に巻き起こる恐れさえあります。

 

つまり、まだ不買運動を実行するにはタイミングが早すぎるのです。

 

不買運動が効果的なタイミング 

 

もし不買運動が起こるとしたら、米国の経済的損失が貿易統計として反映され、かつ、トランプ大統領の支持率低下が持続する期間のぎりぎりを狙うとして、米国大統領選挙の5~7か月程度前、つまり、2020年4~6月頃が、(戦略としては)不買運動を起こす時期としては、最も有効ではないかと考えられます。

 

そして、トランプ大統領が、第3段の追加関税発動の翌日に、第4段の追加関税を立て続けに予告した理由はここにあると思われます。

 

トランプ大統領自身が、本音では、貿易協定の早期妥結を望んでいる

 

もし、中国政府が、このままのらりくらりと早期妥結をはぐらかし、もう1年ほど、貿易協議を引き伸ばされたとしたら、上記の通り、大統領選前の不買運動によって、予期せぬ経済的損失と支持率低下に見舞われるリスクが大きいと考えられます。

 

報道では、

  

アメリカのトランプ大統領は、ツイッターに交渉が長期化した場合、「中国にとってさらに不利な取り引きになるだろう」と投稿し、速やかに歩み寄るよう圧力を強めました。

2019年5月12日 NHK NEWS WEB より

 

とありますが、これは、トランプ大統領の焦りの裏返しと思われます。

 

つまり、中国政府よりも誰よりも、本音の部分では、トランプ大統領自身が、貿易協定の早期妥結を望んでいるのです。

 

2020年まで待つことはとてもできず、2019年内になんとかこの貿易戦争を集結したいと心から望んでいることでしょう。

 

しかし、国内のトランプ支持層の手前、決して安易な妥協をすることもまた出来ません

 

もし、知的財産権保護や補助金撤廃などに踏み込まない内容での貿易協定を結んでしまえば(たとえ、それが経済的に米国の利益になったとしても)、トランプ支持層からは安易な妥協と捉えられてしまい、支持率の低下に結びついてしまいます。

 

つまり、トランプ大統領に残された手は、中国にとって耐え難い追加関税を次々に発動することで、米国にとって有利な条件で、貿易協定を結んだという成果を得るしかありません。

 

 

しかし、それは不可能と思われます。

 

 

なぜなら、中国政府もまた、(一党独裁の)国のあり方の変革を求める米国の主張を飲むことは、決してない(できない)からです。

 

そのため、米中貿易戦争は、今後1年以上の長期化が容易に予想されるのです。

 

中国政府は、ただ大統領選まで1年待てば良い

 

中国政府も、もちろん、経済悪化は苦しく、本音では、なんとか早期妥結を望んでいるでしょう。

 

しかしそれは、米国政府の求める市場開放を含まない内容で、でなければなりません。

 

巷では、このまま中国経済が悪化すれば、中国共産党への不満が高まり、中国が瓦解する、などという流言をしばしば聞きますが、私はそんなことはありえないと考えています。

 

なぜなら、中国の株式市場は、過去、暴落と高騰を繰り返してきました。

 

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 googleファイナンスより

 

そのため、中国投資家の間では、このような皮肉も流れるほどです。

 

母に連れられて幼稚園に行った時、上海総合指数は2000を少し上回る水準だった。母が高校に送り出してくれた時も2000ちょっとで、母が卒業式に出席してくれた時も2000ちょっとだった。母が永遠の若さを保ち、決して年を取らないことを願う。上海総合指数のように。

2018年7月24日 Bloombergより

 

逆に言えば、中国投資家は、中国株がどれほど高騰しても、また2000程度まで下落することに慣れて(諦めて)います。

 

今後、どれほど株価が低迷しても、過去と同様に、中国共産党に対する不満はあっても、それが社会現象として表出するような事件は起こらないと思われます。

 

 

一党独裁による、学習的無気力というものでしょうか。

 

たいへん恐ろしいですが、中国が、内部から変革する可能性は、ほとんどないでしょう。

 

つまり、中国政府としては、経済悪化は苦しいですが、あと一年で、トランプ大統領を追い出せるなら、それまで我慢比べをすればよい、と考えています。

 

最高なら、中国寄りの内容での早期妥結、最悪でも、このまま1年耐えるだけで良い、というのが、中国の内心でしょう。

 

そしてそれは、トランプ大統領にとっては、どちらも選ぶことが出来ない最悪の選択です。

 

むすびに

 

大変長くなってしまいましたが、我々日本人としては、もちろん、中国の市場が開場され、中国の一党独裁体制もなくなるのが最良ですが、それは現時点では、到底不可能と考えざるを得ません。

 

それならば、早期に世界の経済的混乱が収まってくれたほうが、輸出入に係る多くの人が苦しまずに済むのになあ、と考える次第です。

 

 

ちなみに、話は変わりますが、ドイツ銀行の株価が6.85EURと、こっそり過去最低を目指しているのが気がかりです。

 

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google ファイナンスより 

 

もう少しで、最高値から逆ダブルテンバガーという、大変恐ろしい額になろうとしています。

 

米中貿易協議に目がいってしまい、ついつい忘れがちですが、今後も、ドイツ銀行にも注視しなければなりませんね。

 

くわばらくわばらです。