【さらに注意!】高所得サラリーマン(医師含む)にとって、『ボーナス(賞与)』とは、罰金刑である事を自覚しよう。~年棒制のススメ~

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こんにちは、shiro-mameshibaです。

 

 

そろそろ、賞与(ボーナス)が出る頃だと、ウキウキしている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、とても残念なお知らせですが、高所得のサラリーマン(医師含む)にとって、『賞与』とは、追加の重加算税を払うだけの、単なる罰金刑であることを自覚しましょう。

 

 

具体的には、おおよそ年収780万円以上の方、または、1回のボーナス額が635,000円を超えている方は、非常に大きな損をしています!

 

 

ボーナスを貰って、ニコニコ浮かれている場合ではありません!!

 

 

『賞与』が罰金刑である理由

 ①給与にかかる社会保険料には上限があり、それ以上月収が増えても、社会保険料はこれ以上増えない(健康保険:50等級(標準報酬月額1,355,000円~)、厚生年金:35(32)等級(標準報酬月額635,000円~)が上限)

 ②しかし、『賞与』があると、給与とは『別枠』で、さらに社会保険料が新たに発生する

 ③しかも、『賞与』にかかる社会保険料は、給与にかかる上限よりも、遥かに高い上限が設定されている(健康保険は年間573万円まで、厚生年金は月間150万円まで)ため、賞与が多い(635,000円~)と、新たにかかる社会保険料が非常に高額になる

  

『賞与』にもかかる社会保険料 

 

 

実は、かつて、『賞与』には、社会保険料(健康保険保険料+厚生年金保険料)がほとんどかからなかった(賞与額の約1%のみ)という、とても大きなメリットがありました。

 

 

そのため、「毎月の給与を低く抑えて、その分、賞与を過大に払う」というスキームにより、年間の社会保険料を抑制することで、労働者にとっても、雇用する法人にとっても、社会保険料負担を下げることができるという、とてもとても大きなメリットがありました。

 

 

 

しかし、平成15年4月から、従来の、主に月額給与にのみかかっていた社会保険料を、『賞与』にも、同率の負担をかけるという、いわゆる「総報酬性」が採用されました。

 

 

 

これは、『賞与』がもらえる大企業優遇と、『賞与』がもらえない中小企業のサラリーマンの不公平感を解消するということが、建前の理由です。

 

(しかし、厚労省の本音は、ただ単に社会保険料徴収額を上げたかっただけです。)

 

 

いずれにせよ、この大きな改正により、『賞与』にも、月額給与と同率(現在、健康保険:9.84%、厚生年金18.300%)の負担がかかるようになってしまいました。

 

 

 

しかし、非常に注意しなければならないことは、高所得者(おおよそ年収780万円~)にとっては、『賞与』を受け取ると、社会保険料負担が過大に増大してしまう!ということです。

 

 

高所得者とボーナス

 

どういう事かと言うと、まずは、下の東京都の『社会保険料額表』を御覧ください。

 

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(R3 東京都における『社会保険料額表』)

 

 

まず、社会保険である健康保険料と厚生年金料は、それぞれ、月額の給与(標準報酬月額)によって変動し、給与が上がれば、その分、社会保険料も上がる仕組みになっています。

 

 

しかし、その社会保険料月額にはそれぞれ上限が定まっており、健康保険では50等級(標準報酬月額1,355,000円~)で136,776円、厚生年金では35(32)等級(標準報酬月額635,000円~)で118,950円が、月額の最大負担料となっています。

 

 

もちろん、これだけでも、かなりの高額な負担ではありますが、月額給与(標準報酬月額)が、これ以上いくら上がっても、社会保険料は、この上限額以上には、上がることはありません

 

 

 

 

しかし、もし『賞与』がある場合、この給与にかかる社会保険料の上限額に加えて、給与とは『別枠』で、『賞与』にも、新たに社会保険料がかかってしまうのです!

 

 

 

ボーナスにかかる『別枠』の社会保険料負担

 

繰り返しますが、『賞与』にかかる社会保険料は、給与(標準報酬月額)とは『別枠』です。

 

 

そして何より恐ろしいのは、上限額の制限が、給与よりも、さらに高額に設定されていることです!

 

 

標準賞与額にかかる上限は、健康保険は年間573万円(年3回まで、年4回以上支給される賞与は標準報酬月額の対象)までとなり、厚生年金保険は月間150万円までが上限額となります。

 

 

ここに、社会保険料(健康保険:9.84%、厚生年金18.300%)が加算されます。

 

 

つまり、理論上、健康保険は年間573万円✕9.84%=56.3832万円まで、(賞与150万円/回の場合)厚生年金は150万円✕2✕18.300%=27.45万円/1ボーナスまでの、追加の社会保険料負担が、給与とは『別枠』で、さらにかかってしまうのです。

 

 

すなわち、通常の給与では、標準報酬月額635,000円~(年収780万円以上)で、厚生年金料の負担は上限打ち止めとなり、これ以上負担が上がることはないのですが、『賞与』の場合、この上限を軽々と超えて、150万円まで18.300%もの過大な負担が新たに計算されてしまうのです!!

 

シミュレーション

 

分かりやすいように、各年収ごとに、賞与の有り無しで、社会保険料がどう変わるかをお示しします。

 

年収1,000万円の場合

 

まず、年収1,000万円の方の場合

 

賞与なし

 

賞与がない場合、

 

標準報酬月額=1,000万円÷12=83.3万円となります。

 

 

すると、健康保険料は40等級、厚生年金は上限の35(32)等級で打ち止めとなりますので、それぞれの負担額は

 

 

 給与にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=86,592円(40等級)×12=1,039,104円

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

  

  計 2,466,504円

 

 となります。

 

 

賞与あり

 

一方、賞与ありで、給与が年間762万円、賞与が年間119万円×2(計1,000万円)だった場合を想定します。

 

標準報酬月額=762万円÷12=63.5万円となります。

 

 

すると、健康保険料は35等級、厚生年金は、賞与なしの場合と変わらず、上限の35(32)等級となりますので、給与にかかる社会保険料負担額は

 

 給与にかかる社会保険料負担額 

  健康保険料=63,960円(35等級)×12=767,520

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

 

  計 2,194,920円

 

となります。

 

 

そして、これとは『別枠』で、『賞与』にも社会保険料がかかります。

 

賞与119万円に対して、健康保険は上限なしで9.84%、厚生年金も上限なしで18.300%となりますので、賞与にかかる社会保険料負担額は

 

 『賞与』にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=119万円×9.84%×2回=234,192

  厚生年金料=119万円×18.300%×2回=435,540

 

  計 669,732円

 

となります。

 

 

よって、給与と賞与にかかる社会保険料の合計は

 

 年間社会保険料2,194,920円+669,732円=2,864,920

 

となります。

 

賞与ありなしの社会保険料の差額

 

○最終的に、賞与なしの場合と比較すると、

 

 

 賞与ありなしの社会保険料の差額=2,864,920円ー2,466,504円=398,416円

 

 

と、398,416円社会保険料負担がかかることが分かります。

 

 

賞与ありにするだけで、こんなにも負担額が増えるのです。

 

 

年収1,500万円の場合

 

次に、年収1,500万円の方の場合

 

賞与なし

 

賞与がない場合、

 

標準報酬月額=1,500万円÷12=125万円となります。

 

 

すると、健康保険料は48等級、厚生年金は上限の35(32)等級となりますので、それぞれの負担額は

 

 給与にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=124,968円(48等級)×12=1,499,616

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

 

  計 2,927,016円

 

となります。

 

 

賞与あり

 

一方、賞与ありで、給与が年間1,050万円、賞与が年間150万円×3(計1,500万円)だった場合を想定します。

 

標準報酬月額=1050万円÷12=87.5万円となります。

 

 

すると、健康保険料は41等級、厚生年金は、賞与なしの場合と変わらず、上限の35(32)等級となりますので、給与にかかる社会保険料負担額は

 

 給与にかかる社会保険料負担額 

  健康保険料=86,592円(41等級)×12=1,039,104

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

 

  計 2,466,504円

 

 となります。

 

 

そして、これとは『別枠』で、『賞与』にも社会保険料がかかります。

 

賞与150万円×3に対して、健康保険は上限なしで9.84%、厚生年金も上限なしで18.300%となりますので、賞与にかかる社会保険料負担額は

 

 

 『賞与』にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=150万円×9.84%×3回=442,800

  厚生年金料=150万円×18.300%×3回=823,500

 

  計 1,266,300円

 

となります。

 

 

よって、給与と賞与にかかる社会保険料の合計は

 

 年間社会保険料2,466,504円+1,266,300円=3,732,804

 

となります。

 

賞与ありなしの社会保険料の差額

 

○最終的に、賞与なしの場合と比較すると、

 

 賞与ありなしの社会保険料の差額=3,732,804円ー2,927,016円円=805,788

 

 

と、なんと805,788円社会保険料負担が余計にかかることが分かります。

 

 

 

年収2,000万円の場合

 

最後に、年収2,000万円の方の場合

 

賞与なし

 

賞与がない場合、

 

標準報酬月額=2,000万円÷12=166.7万円となります。

 

 

すると、健康保険料は上限の50等級、厚生年金は上限の35(32)等級となりますので、それぞれの負担額は

 

 給与にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=136,776円(50等級)×12=1,641,312

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

 

  計 3,068,712円

 

となります。

 

 

賞与あり

 

一方、賞与ありで、給与が年間1,550万円、賞与が年間150万円×3(計2,000万円)だった場合を想定します。

 

標準報酬月額=1,550万円÷12=129.1万円となります。

 

 

すると、健康保険料は48等級、厚生年金は、賞与なしの場合と変わらず、上限の35(32)等級となりますので、給与にかかる社会保険料負担額は

 

 給与にかかる社会保険料負担額 

  健康保険料=124,968円(48等級)×12=1,499,616

  厚生年金料=118,950円(35(32)等級)×12=1,427,400円

 

   計 2,927,016円

 

となります。

 

 

そして、これとは『別枠』で、『賞与』にも社会保険料がかかります。

 

賞与150万円×3に対して、健康保険は上限なしで9.84%、厚生年金も上限なしで18.300%となりますので、賞与にかかる社会保険料負担額は

 

 『賞与』にかかる社会保険料負担額

  健康保険料=150万円×9.84%×3回=442,800

  厚生年金料=150万円×18.300%×3回=823,500

 

  計 1,266,300円

 

となります。

 

 

よって、給与と賞与にかかる社会保険料の合計は

 

 年間社会保険料2,927,016円+1,266,300円=4,193,316

 

となります。

 

賞与ありなしの社会保険料の差額

 

○最終的に、賞与なしの場合と比較すると、

 

 賞与ありなしの社会保険料の差額=4,193,316円ー3,068,712円=1,124,604円

 

 

と、なんとなんと、1,124,604円も、新たに社会保険料負担がかかることが分かります。

 

 

『 賞与』をもらったばかりに、同じ額面年収にも関わらず、100万円オーバーも毎年損してしまう計算になります!!!

 

 

 むすびに

 

 

以上の通り、残念ですが、『賞与』をもらうことに、現在はなんのメリットも有りません。

 

 

『賞与』とは、ただ単に、『別枠』の、しかも、上限額がさらに引き上げられた社会保険料がかかるだけの、重加算税の罰金刑です。

 

 

年に3~4回のボーナスが支給される会社もあるようですが、支給回数が増えて、1回の支給額が下がる(厚生年金上限150万円制限にかからない額で、複数回賞与をもらう)ことは、むしろ、さらにtotalの社会保険料を上げるだけで、これもまたメリットがありません。

 

 

1回のボーナス額が635,000円を超えている方(厚生年金上限を超える方)は、気づかないうちに、非常に大きな損をしているのです!

 

 

 

我々医師を含めて、高所得サラリーマンにとって、『賞与』とは、莫大な追加の社会保険料を負担させる、とても恐ろしい制度であることを、まず理解しましょう。

 

 

前回お話ししましたが、厚生年金は、払った時点で元本割れ(-20%~)する、詐欺的金融商品です。

 

shiro-mameshiba.hatenablog.com

 

 

しかし、厚生年金については、まだ、税引き後で支払った額の半額くらいは戻ってくるので、なんとか負担も我慢もできますが、健康保険料については、払った分が、まるごと大損するだけです。

 

 

『賞与』による追加の社会保険料負担は、極力、回避する方法を検討しなければなりません

 

 

賞与を避ける方法

 

これを回避するためには、

 

①賞与なしの年棒制にして、毎月一定額をもらう

 

ことが一番です。

 

 

こうすれば、賞与がなくなるため、毎月の給与の上限までしか、社会保険料がかかりませんので、結果的には社会保険料を大幅に節約することが可能です。

 

 

 

また、次点の策としては、

 

②『賞与』を 年2~4回 → 年度末の1回に回数を減らす

 

ことが挙げられます。

 

賞与額150万円/回に満たない額で、複数回賞与をもらっても、その度毎に、最大限の社会保険料がかかってしまいます。

 

どうせなら、年1回、年度末に業績に合わせて、厚生年金上限の150万円を超える額で、一括支給してもらえれば、150万円を超える部分には、厚生年金料の負担がなくなります

 

 

 

雇われの身としては、これらの交渉は実際にはかなり難しいでしょうが、①企業として個人に支払う年収総額は変わらないこと、②社会保険費が下がる分、企業の負担も削減できること、をアピールすれば、もしかしたら、検討してもらえるかもしれません。

 

 

(実際には、年間の残業代が 給料の多くを占める方などでは、年棒制にした場合に残業代をどうするかなど、よく相談が必要となることでしょう。)

 

 

また、最終的には、開業医やフリーランスとして法人化し、自分の給与を年棒制として、賞与なしにするのが、現実的には大変優れた解決策です。

 

 

 

我々、サラリーマン(給与所得者)は、国にとっては、都合の良い、納税金産生装置くらいにしか考えられていません。

 

 

国の仕組みを変えるのは、個人にはほぼ不可能ですので、せめてできることは、搾取されない側(資産家側)に回れるように、上手く立ち回ることしかありません。

 

 

『賞与』が罰金刑である理由

 ①給与にかかる社会保険料には上限があり、それ以上月収が増えても、社会保険料はこれ以上増えない(健康保険:50等級(標準報酬月額1,355,000円~)、厚生年金:35(32)等級(標準報酬月額635,000円~)が上限)

 ②しかし、『賞与』があると、給与とは『別枠』で、さらに社会保険料が新たに発生する

 ③しかも、『賞与』にかかる社会保険料は、給与にかかる上限よりも、遥かに高い上限が設定されている(健康保険は年間573万円まで、厚生年金は月間150万円まで)ため、賞与が多い(635,000円~)と、新たにかかる社会保険料が非常に高額になる