医学部入試不正報道に思うこと

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こんにちは。

 

昨今、医学部入試不正報道に世間がざわついています。

この件のついて、shiro-mameshibaが思う所を述べてみます。

 

東京医科大に続き、昭和大学でも医学部入試不正

 

東京医科大に続いて、昭和大学医学部入試でも、現役生に対して得点加算という優遇措置をとっていたことが判明しました。

 

東京医科大とは異なり、女子学生に対しては、点数による差別化は行われていないということです。

 

賛否両論あるかと思いますが、shiro-mameshibaとしては、受験前時点で、得点優遇の説明なしに画一的に優遇措置をとったという点で、アウトと考えます。

 

女子医学生、多狼生は、現役入学した男子医学生に劣るのか?

 

以前もお話ししましたが、医学部生は、基本的には女子生徒の方が、筆記試験では優秀だと経験上は実感しております。

 

shiro-mameshiba.hatenablog.com

 

 

shiro-mameshibaが在籍していた大学は、某地方国立大学であり、私立大学ではなく、一般入試に面接もなかったはずなので、そういった不正はおそらくはなかったと思われますので、純粋に女子学生の方が、医学部入学後に努力していたからだと考えます。

 

それに対して、多狼生(2~3狼以上)は、やはり経験的には、現役~1狼入学の学生と比較して、留年や国試浪人となる方の割合は高かったように思います。

 

その理由としては、入学時点での成績が同じであっても、もともとのポテンシャルの違いということもありますが、講義や実習をサボる傾向の方が、全体としては多狼生の方が多かったからだと思っています。

 

もちろん、何狼であっても、まじめで優秀な方も多いですが、全体的な比較で、という意味です。

 

医学部入試の加点優遇は善か悪か

 

入試制度の平等性から言えば、許されることではないと思います。

 

医師養成政策を、社会インフラとして考えた場合には、議論の余地があると思います。

 

この点については、今後の社会的な議論が必要と思われます。

 

しかし、今回、このような医学部受験不正という報道で発覚してしまった経過を考えると、少なくても、今後10年程度の医学部入試の方針としては、年齢や性差による優遇措置は、行われなくなることは確実でしょう。

 

そしてそれにより、今後20年程度は、医師の労働環境は、ますます過酷になることが予測されます。

 

医学部入試平等化によって起こること

 

全国でどれくらいの割合で、女子学生や多狼生に対する点数差別が行われていたのかは現時点ではわかりませんが、今後、医学部合格者の中で、女子学生や多狼生の割合が増えることは確実です。

 

そのために、以下の3つの出来事が今後予想されます。

 

①留年生の増加にともなう、経済破綻する家庭の増加

 

医学部に入学し、留年することなく、医師国家試験合格まで、ストレートでそのまま医師になれる学生は、おそらく、国立大学で8~9割、私立大学(上位難関大除く)で7~8割程度です。

 

毎年、進級のためには、才能だけではどうしようもないほどの勉強量と暗記量を必要とする試験や、多くの実習をこなしていく必要があります。

 

大学入試の世界では、神様か宇宙人レベルの東京大学理科3類医学生であっても、医師国家試験合格率は90%程度です。

 

世間が思っているほど、医学部入学=医師になれる、という甘い図式ではありません

 

私立大学では、医師国家試験合格率を上げるために、卒業試験で、国家試験に合格しなさそうな学生をふるい落とすことまでしています。

 

そのため、医学部に入学したけれど、卒業出来ずに退学する、という学生が、意外と多く存在します。

 

そして、医学部の中での優秀さは、絶対的なものではなく、相対的に評価されます

 

なぜなら、医師国家試験は、何点取ったら合格、というものではなく、受験生全体の下位1割が不合格になる、という試験だからです。

 

より多くの女子学生や多狼生が入学した場合には、優秀な女子医学生の増加により、相対的に成績が低下した学生の留年率が、全体的には増加するものと思われます。

 

国家試験でも、これまでなら合格していたレベルの学生が、全体的なレベル上昇に伴い、相対的に得点が低下し、不合格となる可能性もあります、

 

そのため、医学部卒業に必要な資金を6年間として計算して私立大学医学部に入学した学生の家庭の中には、想定以上の資金が必要となり、経済破綻する家庭が増える、かもしれません。

 

②女性医師の増加

 

優秀な女子医学生が増えることで、将来的に女性医師が増加し、医療レベルが底上げされるというメリットが考えられます。

 

しかし、以前にも述べた通り、20~30代の即戦力となる医師には、夜勤当直休日勤務地方への強制転勤といった勤務体系が必須となります。

 

shiro-mameshiba.hatenablog.com

 

このため、この時期に出産子育てが重なる女性医師が増加することにより、男性医師独身医師に、その分の仕事量が増えていくことは確実でしょう。

 

外科や救急等の過酷な勤務体系の科の人手不足はますます増えると思われます。

 

特に地方では、人手不足により、閉院する病院も増えていくことでしょう。

 

しかし、そもそもの問題点は、医師の労働環境の悪いことにあり、女性医師に責任は全くありません

 

看護師のように、交代勤務制や、それを可能とするのに必要な予算を検討もせず、医療費を削減することしか考えてこなかった、財務省厚労省医師会国会の怠慢が、根本的な問題だと私は考えます。

 

③医学部の増加と、医師労働環境の改善、それによる医師給与の低下

 

これは、20年以上先の見通しになりますが、前述の通り、人手不足がますます加速することが確実となる以上、医療サービスをこのまま維持するためには、医師数を増やすしか解決方法はありません。

 

医療のアクセス制限や、保険診療の制限等の方法もありますが、国民の不満が増えるために、政治家にはこの手段をとることは出来ないでしょう。

 

今後、現場の疲弊の声が大きくなれば、ゆっくりとですが、医学部の新設、あるいは、既存医学部の定員数増加が行われることでしょう。

 

そして、医師数を増やし、医療を集約化し、交代勤務制にする。

 

このため、(数十年後の話ではありますが)、非常に辛い時期を超えれば、医師の労働環境としては徐々に改善することが期待できます。

 

しかしもちろん、医師にとっての良い話ばかりは不可能です。

 

医師数増加に伴い、医師の給与は大幅に削減されていくことになるでしょう。

 

3交代制を可能とするためには、医師一人当たりの給与は額面で6~7割程度まで削減されるかもしれません。

 

これから医師になる学生にとっては、つらい時代となることでしょう。

 

また、患者さんにとっても、身近な病院の閉院や、外来待ち時間の長期化、医療費増大というデメリットも見えてくるはずです。

 

むすびに

 

オリンピックで公共投資は増大し、建築業界は大いに儲かっています。

 

しかし、毎年増大する医療費に対して、仕事量は倍増しているにもかかわらず、医師をはじめとする医療従事者の給与は全く増加する兆しはありません。

 

 医学部入試の不正の報道がにぎわっていますが、もう少し、その背景や、今後の日本に医療についても考えていただけると嬉しいなと、shiro-mameshibaは考えます。