医局とはなにか? ー 医師専門の派遣会社が一番近いと思う

 

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一般の方が『医局』と聞くと、白い巨塔のイメージがまず出てくると思います。

 

強権的な教授、

教授にこびへつらい部下に厳しい准教授、

医局員間でパワハラが横行する労働環境、

虐げられる女性医師、

大勢の医局員を引き連れての教授回診、

研究のために患者さんをモルモット扱いする研究医たち。

 

などなどでしょうか?

 

このうち、自分が当たっているなと思うのは、大勢の医局員を引き連れての教授回診、くらいなものです。

 

昔はその手の医局もあったかもしれませんが、自分が見てきた範囲では、おおむね、医局に暗いイメージはあまりありません。

 

教授をされる先生も、フレンドリーな方が多いです。

 

じつに、平和なものです。

 

(※ごく一部の、強権的な教授下の医局は確かにありますが・・・。)

 

医局は医師専門の派遣会社

 

時代とともに医局のイメージも役割も変わってきていますが、一般の方に、医局というものを簡単に説明すると、医師専門の派遣会社、というイメージが一番近いと思います。

 

医師になるためには、まず6年間の大学医学部を卒業し、国家試験に合格する必要があります。

 

その後、2年間の初期臨床研修を経た医師が、各自の希望する大学の医局に入局することが多いです。

 

入局する医局に制限はなく、出身大学に関わらず受け入れられていますので、資格だけ地方大学で取って、都会の大学医局に入局される方も多くいます。

  

中には、医局に入局されずに、後期研修を受けられる先生や、研究医に進む先生のほか、フリーランスとして働かれる方もいらっしゃいます。

 

医局に入局しますと、その年の入局者数や必要度に応じて、医局の関連病院(古い言い方でジッツなどとも呼ばれます)に派遣されます。

 

私の入局した小児科医局では、入局後1~3年間は、地域の基幹病院や3次救急病院といった、いわゆる野戦病院の勤務が命じられることが多く、今思い返しても、心身ともにこの時期が最も忙しかったと思います。

 

関連病院とは

 

関連病院は、公立・民間病院を問わず、医師を派遣してほしい病院が、その医局に要請することで、関連病院となります。

 

つまり、派遣される病院によって、我々勤務医は公務員になったり、通常の民間企業勤めになったりと、毎年コロコロ変わります

 

ちなみに、異動の度に退職扱いになりますので、退職金という点で、我々勤務医は著しく不利な扱いを受けます

 

なぜ関連病院が医局に医師の派遣を委ねるかというと、自力で常勤勤務医を獲得するという不安定な方法をとるよりも、大学医局から定期的に勤務医を派遣してもらう方が、常に安定した一定の労働力を確保することができるからです。

(そこで、医局と関連病院間には金銭のやりとりは、公開される医局の収支にその金額がありませんので、私の知る限りはないと思われます。お互いの善意と信頼関係だけの繋がりです。完全にないとは、否定はできませんが。)

 

通常は、一つの県に複数の大学医局の関連病院が混在しています。医局が存在する県を超えて、隣県の病院が関連病院となることもあります。

 

また、一つの病院の中でも、消化器内科はA大学医局から、小児科はB大学医局から、というように、同じ病院でも、科ごとに、どこの大学医局との関係性が強いという特徴があります。

 

医学部志望の受験生やそのご家族に覚えていてほしいこと

 

ですので、一般の方々が想像するよりも、我々勤務医には、医局の縄張り意識というものはあまりありません

 

勤務医同士には、医局の違いによる金銭的な競合関係がないからです。

 

(一部のある大学医局では、学外学内出身で待遇の違いがあるという噂は聞きますが。)  

 

病院全体の飲み会などで他科の先生方と仲良くさせていただく中で、どこどこの大学出身だとか、どこの大学医局に属している、ということを伺って初めて知るくらいなものです。

 

なので、医学部志望の受験生やそのご家族に覚えていてほしいのは、どの大学に入るかは、ほとんど医師キャリアに影響しません

 

本気で医師になりたいなら、偏差値に関わらず自分が入れる大学を探し、1年でも早く医師になり、1年でも長く医療経験を積んだ方が、きっと良い医師になれると思います。

 

医師と結婚したい方に理解しておいてもらいたいこと

 

また、医師と結婚したい方にも理解しておいてもらいたいことは、出身大学や所属医局の違いによってその医師の価値を推し量ることはせず、どのような病院に勤務してきて、今後も勤務医として働いていきたいのか、開業医を目指すのか、それとも、研究医になりたいのか、仕事に対してどれだけの熱量で向き合っているのか、そしてなにより、その人自身の人間性が最も大切です。

 

これは、意識が高ければよい、ということではありませんので、勘違いしないでください

 

医師の職業に、本当に熱心に取り組んおられる先生はおそらく、良い家庭人とはなりえません。(もちろん、男性女性の区別を問わず)

 

臨床にも、研究にも真摯に取り組んでおられる勤務医は、物理的に、労働時間が極度に長く、半面、往々にして給与はとても少ない傾向にあります。

 

むしろ、仕事はほどほどに、研究はあまり興味がない、といった勤務医の方が、時間にゆとりがあり給与も比較的高い病院に勤務することが多いからです。

 

一部上場企業等にお勤めの方の職業イメージと比較すると、一般の方の意識からは逆に思えますが、これが医師という職業の不思議なところです。

 

仕事に対してストイックな医師は、本当に尊敬できると思いますし、そういった方を支えることに喜びを見出す人生もあると思います。

 

仕事も家庭も、両立する人生というのは、仕事に熱心な先生ほど、難しいものです。

 

もちろん、いつも悪態ついているような方は、医師である以前に、人間性の点で、結婚相手としてふさわしい人間ではありません。

 

私自身は某国立大学医学部の出身ですが、経験的に、医師の人格は、出身大学の国立・私立や偏差値の違い、入局する大学医局によりません。

 

どこの所属の医師かではなく、その人の人格自体が最も大切です

 

仕事も、そこそこ熱心にやり、学会発表にも手を抜かないけれど、 できれば家にいたいし、いつかは開業しようかな、くらいの医師の方が、人生をともに楽しむパートナーという視点からすると、より良い相手かもしれません。

 

医師との結婚を検討されている方は、その点について、ご理解いただければ幸いです。

 

医局の年会費

 

医局に入ると、毎年医局費というものがかかります。

 

医局によって この金額は様々ですが、私の入局した大学医局では、おおよそ年間10万円くらいかかります。

 

他科の医局では、これが数十万円/年かかるという噂も聴いたことがあります。

 

これとは別に、勤務している病院でもさらに医局費がかかり、これは病院によって異なりますが、今まで5~15万/年かかっていました。

 

この金額が、勤務医である限りはずっと継続します。

 

開業医になったらなったで、地域の医師会に払う医師会費というものがかかり、これはさらに高額だという噂です(詳細は私にはわかりません)。

 

 医師を続ける上では、どの勤務体系であっても、このような維持費が税金のように毎年かかります。

 

この大学医局費は、 研究費の一部として利用されたり、医学生の勧誘に使用されたりするのに使われておりますし、病院医局費は、医局員の福利厚生に使われているため、決して理不尽な額とは思いません。一部の人が、私用に使うものでは決してありません。医師と結婚する方が、そんな高額を、何か良からぬことに使っているのではないか、と勘違いされないことを願い、説明いたしました。