医師は超転勤族だよ! ー医師のボラティリティ①

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ここからが、本ブログで最もお伝えしたかったこと、医師のボラティリティについてです。

 

ようやく本題に入れました(笑)。

 

医師は超転勤族だよ!

 

まず第一回目は、医師は超がつくほどの転勤族だということです。

 

医師が激務だ、ということは一般の方々にもよく知られていることですが、転勤族というと、あまりイメージがないかもしれません。

 

実際、私は卒後研修医2年を経て小児医局に入局して10年ほど経ちましたが、ほぼ毎年の転勤があり、その都度、勤務病院が変わってきました

 

小児科はまだ1年ごとの転勤でましな方ですが、外科の先生方の中には半年、最も短い方では3か月で転勤なんて先生も目にしてきました。

 

なぜこんな勤務体系になっているか、というと様々な理由があります。

 

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医局制度と関連病院 

 

まず第一に、医局と関連病院の関係性があります。

 

東京のように、1都に複数の大学病院がある地域ではわかりにくいですが、地方では、基本的に1県に1つの医大しかない地域が多いです。

 

そうしますと、その県下にある病院は、自力で常勤勤務医を獲得するという不安定な方法をとるよりも、大学医局から定期的に勤務医を派遣してもらう方が、常に安定した労働力を確保することができます。

 

しかし、中には労働環境として厳しい病院(忙しすぎて燃え尽きる、逆に勉強になる症例が来ない、人手が足りなくて学会に参加できない、子どもの教育環境がないため単身赴任になってしまう、田舎過ぎて娯楽がない、給料が安い、人間関係が悪くて長期の働き手がいない等々)があるのは事実であり、そういった病院では当然、一人の派遣医が長期間働くのは難しくなります。

 

しかし、これが1年間と限定されていれば、医師の使命感や医局との関係性から、まあ1年なら仕方ないか、と我慢して、野戦病院や地方に派遣されても、渋々ですがなんとか受け入れることができます。 

 

これは、都会・地方に関わらず存在する事情ですので、たとえ都会の医局に入局したとしても、医師に転勤はやはり必須です

 

留学制度 

 

また第2に、逆に自己研鑽のために転勤するという場合もあげられます。

 

医療の世界では、地方の医局に勤めていても、東京や京都、その他、各々専門とする分野で先進的な医療をしている病院、海外の研究所で勉強したい、という意欲のある先生のために、多くは医局のつてや紹介で、数年間の勉強期間をもらえる国内外留学という制度があります。

 

その間は、卒後何年目であっても、せいぜいが後期研修医扱いのレジデントとして採用されるため、収入は地方勤務であった時の半分~1/3程度まで激減しますし、勤務医ではなく研究医の場合には、奨学金の対象でなければ基本的には無給扱いのことも多いです(つてがあれば、バイトはできますが)し、逆に学費を払うことさえあります。

 

当然、都会や海外での生活費は地方より増えますので、生活は厳しくなることが予想され、一部の奨学金制度を利用する以外には、留学までにお金をためておかなければなりません。

 

また、留学する先生の穴埋めのためにも、やはり転勤する医師が必要になります。

 

そこでしか学べない医療がある

 

一般的に、医師が、とりあえず一通りの知識と技術を身に着けるには、最低でも10年はかかるといわれています。

 

大学病院のような大勢の優秀な医師がいる中で、数十万人に一人の疾患を治療したり、先進医療を学ぶことも必要です。

 

一方で、地方の基幹病院の中で、その地域にその科の医師がわずか数人、という環境で、その町全体を1年じゅう自分が守る、という責任を負う経験も必要ですし、何万人のcommon diseaseの中から、見逃してはいけないレア疾患を見つける観察眼も、地方でなければ鍛えられません。

 

そのため、一人前の医師になるためには必然的にたくさんの病院を経験しなければなりません。 

 

開業までのお礼奉公

 

また、開業を考える先生の中で、円満に医局から離脱するため、待遇が悪かったり激務の病院に数年間勤務してから開業する、といった、お礼奉公のような位置づけの勤務をすることもあります。

 

女性医師の増加

 

それに加え、近年、女性医師が増えてきたことも要因として挙げられます。

(偶然ですが、この記事の直前に、色々話題になってしまいました。)

 

私が見てきた範囲では、基本的には、女性医師の方が、優秀で勤勉であり、将来設計をしっかりと考えている傾向があります。(実際、医師国家試験合格率は女性の方が高いというデータがあります。)

 

しかし、卒後10年目までの時期は、女性にとって妊娠出産といったライフステージに重なるため、当然、この時期にご結婚、子育てが必要となることが多いです。

 

このため、子育て中の女性医師の多くは、時短勤務体制(平日日中のみの勤務。夜間・休祝日拘束なし、日当直なし)をとることになります。

 

しかし、医師の仕事は平日日中だけではなく、夜間の当直や呼び出し、休日の日直当直必須であり、時短勤務が可能な病院は、県の中心部にあり、ある程度の規模をもち、人員に(わずかでも)余裕がある総合病院でないと不可能です。

 

そのため、私が以前にいたことがあるような、人口数万人程度で、町に一つの総合病院で小児科医が2人しかいない、といった環境では、とても子育て中の女性医師が勤務することはできません。

 

必然的に、子育て中の医師は都市部に配属され、独身の医師や、家族ごと転勤可能な男性医師に僻地での勤務が命じられてしまうことになります。

 

(断っておきますが、優秀な女性医師が増えることにも、子育て中の医師が時短勤務を選ぶことも私自身は賛成ですし、医師の労働環境を改善するためにも、この流れをもっと進めていってほしいと願っております。

ただ、僻地勤務の医師に対してのインセンティブとして、都市部の医師より少なくても数百万円は多い手当をつけてほしい、というのが本音です。

下記の記事にある800万円というのは、やや多すぎる印象ですが、それだけ都会住まいに慣れている方には、田舎暮らしが苦痛ということでしょうか・・・。)

 

yomidr.yomiuri.co.jp

 

責任者として 

 

ある程度の経験を重ね、医局で責任ある立場を務めてこられた先生では、50~60代で、地方病院の院長や副院長待遇での勤務を求められることがあります。

 

したがって、若い時だけではなく、ある程度の年齢を重ねた方でも転勤ということは考慮しておいた方がよいでしょう。

 

医師志望・医師との結婚を考えている人に知っておいてほしいこと 

 

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以上のことから、主戦力であり、夜間当直・休日勤務が可能となる20代後半~30代医師(特に男性、独身者(女性医師含む))に、へき地への転勤が命じられるという流れは、今後ますます増えてくると考えられます。

 

政府の医師確保対策会議でも、地方での勤務を強制するか否かが毎回取り上げられている事実もあります。(現時点では、職業選択の自由や居住移転の自由という憲法に違反するという点で、強制することまではできないという話になっていますが、今後、憲法解釈の変更といった方法で、医師の強制配置が行われる可能性は十分にあると思われます。)

 

したがって、都会の医局での入局を考えているから安心、というわけではなく、やはり地方への勤務が強制されることも、将来的には覚悟しておかなければなりません。

 

そのため、医師を志望する人医師との結婚を考えている人に絶対に知っておいてほしいのは、医師が超転勤族居住地のボラテリティが大きい)だということです。

 

医師が、一か所の病院で落ち着き、転勤がなくなるのは、その先生の科や医局とのつきあいによってもかわりますが、おおよそ40代後半~50代半ばに入ってからという印象です。(一部の、超優秀で、その病院になくてはならないほど必要とされる医師であれば、若い時から常勤に近い立場になることもありますが、稀です。)

 

長所は短所、短所は長所 

 

これを苦に感じるかどうかは、それぞれの先生と家族のパーソナリティの違いによって変わってくるでしょう。

 

家族といつも一緒にいたいという人なら、家族を含めて度々の転勤を覚悟する必要があります。

 

単身赴任があまり苦にならない(むしろお互い、一人が自由で気楽)という人同士の結婚であれば、医師の生活はメリットとなるかもしれません。

 

私自身は、もともと田舎の出のため、環境としては、近くにコンビニスーパー、それとTSUTAYAがあれば事足りてしまいます。

 

買い物も洋服も、今時、アマゾンZOZOタウンがあれば、全国どこにいても、不自由はしません。

 

料理は自分でしますし、どんな田舎でも、そこそこ美味しい料理屋さんというものはあるもので、それを探すのも楽しみの一つだったりします。

 

むしろ、自然豊かな地域で、毎日美しい風景を見て生活することの方が、とても豊かな毎日を送れるという価値観ですので、実をいうと、僻地への転勤は、私自身はそれほど苦は感じません

 

また、ある程度の田舎ほど給料が高い傾向があるため、若いうちは、そういった無駄にお金を使う必要のない環境で、将来のためにお金をためておくのもよいと思います。

 

ただし、家族とは絶対に一緒にいたいという希望があるため、家族としてはやはり転勤はシンドイと思いますので、将来的には、県の中心部に常勤医として落ち着きたいな、というのが本音です。

 

医師と結婚して、両親と友人に囲まれた実家近くや都市部にはやめに定住したい、若いうちからタワーマンションに住んでみたい、と希望されている方にとっては、勤務医という結婚相手は、はっきり言ってあまりお勧めできません

 

どんな田舎に住んでも良いから、家族と一緒にいることをまず第一に考えられるむしろ転勤で環境が変わるのが楽しみだな、という柔軟性のある方であれば、医師は最良の結婚相手の一つとなるでしょう。

 

また、医師を志望する人にとっては、学力よりも志よりも、どこに住んでもあまり気にしないという鈍感力の方が、医師を継続するうえで重要だったりします。

 

長くなりましたが、医師の実情を知るうえで、個人的に、実は一番大切だと考えている医師の転勤問題について記載いたしました。