【注意喚起】『次亜塩素酸水』は、手指消毒には無効なので注意しましょう!

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こんにちは、shiro-mameshibaです。

 

最近、『次亜塩素酸水』が、新型コロナウイルスに対する有効性の報告があり、巷で話題になっているようです。

 

 

 

しかし、『次亜塩素酸水』は「手指消毒」には無効であることが確認されているため、使用しないようにしましょう。

 

 

次亜塩素酸水とは

 

次亜塩素酸水とは、

 

本品は殺菌料の一種であり、塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液。
わが国では平成 14 年 6 月に食品添加物として指定されており、使用基準及び成分規格が定められている。

厚労省より

 

厚労省に定められている通り、あくまで、『食品添加物』として認可されている製品です。

 

 

つまり、大量の『次亜塩素酸水』で野菜をじゃぶじゃぶ洗うと、抗ウイルス効果が確認されている、ということです。

 

 

これと似た名前に、『次亜塩素酸ナトリウム溶液』、いわゆるハイターなどを薄めたものもありますが、『次亜塩素酸水』とは別の製品になります。

 

このどちらも、抗菌作用も抗ウイルス作用も確認されています。

 

 

しかし、このどちらもが、「手指消毒」には適していません。

 

手指消毒に適した消毒液

 

次亜塩素酸ナトリウム溶液』であるハイターは、CDCガイドラインにも採用されるほど、環境消毒には適した消毒液です。

 

 

しかし、ご存じの方も多いですが、刺激が強すぎるために手指消毒には使用できません。

 

 

これに対し、『次亜塩素酸水』は手指に対する刺激は少ない点がメリットではありますが、有機物(タンパクなど)に触れると、急速に失活し、効果がなくなるという致命的な欠点があります。

  

 

つまり、タンパクの塊である人体の手指に触れた瞬間に失活し、除菌(または抗ウイルス効果)は失われてしまうため、「手指消毒」には使用できないのです。

 

 

『次亜塩素酸水』が手指消毒に使用できない論文

 

 

『次亜塩素酸水』が手指消毒に使用できないことを報告した論文に、以下のものがあります。

 

 

近藤 陽一.安定化弱酸性次亜塩素酸水の手指殺菌効果について. 体力・栄養・免疫学雑誌 2010;20巻2号 :228-231

 

これは、2010年に新型インフルエンザが流行した際に、アルコールなどの他に代用できる手指消毒薬はないかということを調べる主旨の論文です。

 


ただし、この報告は、直接抗ウイルス効果を調べたものではなく、細菌に対する殺菌効果について検討した論文です。

 


50ppmのpH安定化弱酸性次亜塩素酸水、両性界面活性剤、消毒石鹸、アルコールの4種類の方法で手指消毒し、培地に指を接触させた後、それぞれ培地に発育したコロニーの数を目視にてカウントし、殺菌効果について判定しています。

 


このうち、次亜塩素酸水(15ml)、両性界面活性剤では殺菌効果が見られませんでした



考察では、次亜塩素酸水はタンパクにより容易に失活し、わずか0.5ml/L濃度のウマ血清で有効塩素濃度はほぼ0ppmとなったことを報告し、タンパクなどを多く含む手指消毒には適さないものと考えられる、と結論づけています。

 

 

 

ウイルスに対する効果を直接検討してものではありませんが、タンパクによる失活効果を考えると、おそらくウイルスに対する効果も期待できないでしょう。

 

 

千歩譲って、万一、抗ウイルス効果があったとしても、抗菌作用はないため、医療現場や食品衛生関係の職場では使えませんし、もちろん、通常の家庭で使用するにも適していません。

 

基本は流水での手洗いと換気

 

 

コロナ対策の基本は、十分な流水での手洗い(できれば石鹸を使って)とこまめな換気です。

 

 

一番怖いのは、効果がないと考えられる「次亜塩素酸水」での手洗いを過信し、通常の流水での手洗いを怠り、感染が蔓延することです。

 

 

また、商品として発売されている「次亜塩素酸水」のほとんどが、非常に高価であることも疑問です。

 

 

もともと、原価数円~数十円の野菜をじゃぶじゃぶ大量の次亜塩素酸水で洗って洗浄しているため、その原価はおそらく1L1円にも満たないと考えられますが、実際の市場販売価格はその100~1000倍で発売されています。

 

 

市町村で無料で配布している報道も多いですが、それが可能なくらいに原価は安いはずなのです。

 

 

 また、「標準的な院内清掃のあり方(H27厚労省)」では、手指消毒は流水手洗いと速乾性擦式手指消毒薬とが使い分けられ、手指消毒に推奨されているのは、「抗菌石鹸または速乾性擦式手指消毒薬(消毒用アルコール製剤)を用いることが望ましい」としており、『次亜塩素酸水』は推奨に含まれていません。

 

 

また、EPAは、2020年3月4日に新型コロナウイルスに対して有効な消毒薬のリストを公開しました。

 

sustainablejapan.jp

 

当然ながら、この消毒薬の中にも『次亜塩素酸水』は含まれておりません。

 

 

抗ウイルス作用を考えると、おそらく、タンパクが付着していない乾燥した環境用消毒としては効果がある可能性は推測できます。

 

しかし、タンパクが 付着していると効果が失われるため、やはり、唾液からの飛沫の消毒や手指を介したドアノブの消毒に対しては、吹きかけただけではおそらく無効と思われます。

 

 

たっぷりの『次亜塩素酸水』で環境を拭き掃除(清拭)するならば、もしかしたら有効かもしれません。

 


しかし、試験管内(タンパクがない状態)で抗ウイルス効果があるなら、手指消毒にも使えると言うのは、消毒液を直接体内に入れれば効果があるのではないか、と発言した米国大統領なみに、乱暴で根拠に基づかない発言だと考えます。


 

 次亜塩素酸水を使うなら、アルコールか次亜塩素酸ナトリウム

 

 

ただし、やはり高価であったり入手困難で効果が不確実な『次亜塩素酸水』を使うくらいなら、高濃度のアルコール(お酒で代用可)や、普通に売っているハイターで消毒した上で、水拭きをするのが、効果が確実ですし、なにより安価です。

 

アルカリイオン水やら水素水やら酵素水やら、水にまつわる怪しげな商品の歴史は枚挙に暇がありません。。

 

疑似科学の類に騙されないようにしましょう。

 

ジアイーノ

 

ちなみに、同じく、次亜塩素酸水を噴霧する有名な『ジアイーノ』がありますが、こちらも、公式HPでは「ジアイーノは医療機器ではないので、「新型コロナウィルス」や「インフルエンザウィルス」など特定の菌・ウィルスに係る疾病予防や治療の効果については検証しておりません。」と、わざわざお断りをしています。

 

 

また、「次亜塩素酸が「インフルエンザウィルス(A型)」や「ノロウィルス」など一部のウィルスに技術的効果があるということは確認しております。あくまでも、「次亜塩素酸」としての効果のため、ジアイーノ(製品)としての効果ではございません。

 

とまで但し書きをしています。

 

 

つまり、(タンパクと接していない状態での野菜を洗浄したときの)「次亜塩素酸水」としての抗ウイルス作用は確認していますが、それを噴霧したときの抗ウイルス効果は確認されていません

 

 

ちなみに、ジアイーノ溶解液は公式で10±5ppmとされています。

【ジアイーノ】次亜塩素酸の濃度はどれくらい? - 次亜塩素酸 空間除菌脱臭機(ジアイーノ) - Panasonic

 

 

上の実験で手指消毒に使用した50ppm よりも低い濃度です。

 

 

 

それを噴霧しているだけですので、抗ウイルス作用については推して知るべしです。

 

 

 

あくまで、ジアイーノは、塩素臭による消臭作用を期待した商品ですので、間違えないようにしましょう。

 

 

また、手指消毒と同様に、効果がないと考えられる空間除菌(抗ウイルス?)を期待して、肝心のこまめな換気をしなくなることが最も危険です。

 

 

(ちなみに、CDCガイドラインP36 G.では、「噴霧やエアロゾルを発生させたり、粉塵を拡散させるような広域の表面を清掃する方法は、患者ケア区域で行わないこと」としており、いわゆる『空間除菌』は、医療現場では効果がないだけでなく害になるため、推奨されていません。)

 

 むすびに

 

コロナに限らず、世界が混乱すると、投資の世界も医療の世界もフェイクニュースが出回るのが世の常です。

 

 

冷静な投資家であるつもりであるならば、同じように、医療の分野でも流言飛語に騙されない冷静な消費者でいるようにしたいものです。