もし、高プロが医師にも適用されたら ー医師のボラティリティ③
こんにちは、shiro-mameshibaです。
先日、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」の導入が国会で提出され、可決されました。通称「定額働かせ放題法」と呼ばれた、あれです。
さて、医師はこの「高度プロフェッショナル制度」に入るのでしょうか?
今回は、一般の方には謎多い、われわれ一般勤務医の労働と、将来の懸念事項についてまとめてみます。
医師を志望する方、医師と結婚したい方は、ちょっと引くかもしれません。
前提
まず、前提として
前提
・医師は労働者です
・時間外労働には、時間外手当が支給されます
・80時間/月以上の労働では過労死の危険性が高まり、裁判ではこのラインを超えているかどうかが過労死認定に重要なポイントです。
以上を前提に話を進めます。
医師の労働についての現在の厚労省の認識
2017年9月21日厚労省で行われた第2回「医師の働き方改革に関する検討会」において、医師の労働環境についての話し合いが行われました。
以下、厚労省第2回「医師の働き方改革に関する検討会」資料と議事録より要約
(質問側は、日本医師会や日本病院会の構成員の方々。回答側(座長)は、厚労省のメンバーです。)
Q1.医師は労働者か?
Q2.一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」の対象か?
という質問が構成員A(日本医師会や日本病院会)からありました。
これに対し、座長(厚労省)からは
A1.一般の病院勤務医は、全く間違いなく労働基準法上の労働者です。これは疑う余地がありません。そこで争っても勝つ見込みはありません。
A2.医師の仕事は「高度」で「プロフェッショナル」であるが、勤務形態などから高プロには該当しません。
と回答しました。
良いですね。大変良い回答です。
また、別の構成員Bからは
Q3.一部専門職を残業代支払いなど労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」については(医師も)議論の対象にしないのか?
と質問がありましたが、これに対しても
A3.高プロは職務の特殊性ゆえに勤務時間を自分で決められる制度である。本検討会の議論の対象である勤務医の診療時間、勤務時間は医療機関側で決定され、それに従う必要がある。医師の仕事は「高度」で「プロフェッショナル」なものではあるが、高プロは本検討会の議論にはなじまないと理解している。
として、質問を一蹴しました。
ところが、構成員Cからこんな質問がなされます。
Q4.医師が労働者であることを前提としているが、それに根拠はあるのか。医師は、病院のためではなく地域住民のために働いている(ので労働者ではないのではないか?)。
『医師は労働者ではない。』
この発言の背景として、日本医師会からの発言(2017年4月29日)があります。
また最近でも、日本医師会常任理事から、こんな発言が出ました。(2018年7月11日)
「過労死ラインで設定すると、現時点では対応が難しく、地域医療が崩壊し、命を救える患者も救えない状況になる。過労死ラインを超えたような働き方も認めていただきたい」
として、過労死ラインにとらわれない医師特別条項の設定の必要性を訴えています。
ということです。
心底、恐ろしいと感じます。
しかし、この質問に対しても、複数の委員から
A4.勤務医は労働時間が決まっている。労基法上の労働者であることは争う余地がない。「患者のため」という意識は問題にならない。労働者かどうかという議論は締めていただきたい。
とはねのけられました。
心強い発言です。
日本医師会・日本病院会とはなにか?
日本医師会や日本病院会は、開業医や病院経営者の集まりであり、つまりは一般労働者に対する経営者や理事の集まる経団連のようなものです。
としてとらえると、おおよその関係性がわかると思います。
つまり、下図の通り
日本医師会と日本病院会は、経団連のように、一般労働者であるわれわれ一般勤務医から、できるだけの労働力と賃金をやりがい搾取したい人の集まりです。
そのため、勤務医と医師会・日本病院医会の利益は、時に相反することがあります。
結論
結論
厚労省、頑張って!
失礼しました。
Shiro-mameshibaの場合。
私の場合、毎月給与は額面100万円前後(税抜き手取り70万円弱)ですが、そのうち、額面20~30万円/月が時間外手当です。
現在勤務している病院では、それほど激務ではないため、時間外労働はあまり多くはない(約50~60時間)ですが、野戦病院勤務の時代には、時間外労働120時間前後(時間外手当50万円前後)という時代がありました。おおよそ、額面給料の1/3~1/2弱が時間外手当です。
過酷な労働環境ではありましたが、時間外手当を多めにもらえていた(当たり前ですが)ため、なんとか踏ん張ることもできていました。
しかし、これが「高度プロフェッショナル制度」に組み込まれて、時間外手当が削減、ないし削除されたならば、心が折れていたかもしれません。
そして、将来的にはその可能性も十分に考えなければなりません(少なくても、その方針を望む人たちがいます。)。
「高度プロフェッショナル制度」は、『勤務医狙いうち法案』 ?
そもそも、年収1075万円をこえるサラリーマンって、勤務医以外にどれだけいるのでしょうか?
「高度プロフェッショナル制度」は、将来的な『勤務医狙いうち法案』を見越して可決されたのではないか、という懸念を私は感じています。
むすびに
以上、医師の将来的な労働のボラティリティの大きさについて、まとめてみました。
医師志望の学生たち、医師と婚活したい方々に理解していただきたいのは、もし勤務医に「高度プロフェッショナル制度」に近い制度が導入された場合には、勤務医の給料は激減する可能性が高い、そしてなにより、過労死しても守られないかもしれないということです。
厚労省、がんばって!